昨年の錦江湾横断遠泳大会に参加してくれたジュニア水球チームの東福 暖慈君が児童作文集 かごしま第61集に掲載されました。最後の評には、題名から、どんなやる気なのか想像させられる。最初から最後まで一気に読み通すことができる、とても読みやすい作品です。その理由として、短い文で書き表しているので、文章にリズムがあります。また、場面ごとの心境や会話を書くことで、その場面の様子が目に浮かぶように伝わってきます。終末の遠泳のゴール場面で、母の言葉の意味を考えるところに親子の愛を感じました。 とありました。
私もこの作文を書き起こしながら遠泳の感動がよみがえりウルウルとした気分になりました。
皆様、是非読んでください!
その錦江湾横断遠泳大会ですが、 下記の通り行います。
【第16回 桜島・錦江湾横断遠泳】
今年で16回目となる標記大会を平成31年7月14日(日)【桜島・錦江湾横断遠泳】を実施いたします。
多くのお子様方に参加していただき、「やればできる!」という大きな自信と「ヤッター!」という大きな感動を得て大きく成長して欲しいと思います。
練習期間が長期間となりますが、泳力・体力のレベルアップ、さらには厳しい練習の中で「挨拶」や「返事」「素早く行動する」「我慢して頑張る」等の精神的な教育も徹底したいと考えております。詳しくは原田学園スイミングスクールへお問い合わせください。
昨年の様子はユーチューブで↓↓↓ご覧ください。
チェスト、おれのやる気を見せてやる
井作田小学校4年 東福 暖慈
「五、四、三、二、一、チェストー!」
大きなかん声と共に、ぼくの5・6キロの戦いが始まりました。この夏、ぼくは、母のすすめで初めて桜島横断遠泳に参加することになりました。
「無理、無理。だって、危険な生き物がいるかもしれないし、サメとかクラゲとか。」
と、ぼくは、しりごみしました。でも、母は、
「あら、かわいいイルカがいるかもよ。人生も何か変わるかもしれないよ。」
と、楽しそうです。それに後おしされ、つい、「うん。」とうなずいてしまいました。
六月、練習が始まりました。バディーやみんなのペースに合わせて泳がなければなりません。ついていけず、列をくずしてしまったり、そのくせ、もぐって遊んだりしてコーチに注意をされることもよくありました。二千メートル検定の日がせまったある日、だらだらと何となく練習に参加していたぼくに母が、
「今のままのだんじでは、みんなについていけないよ。いっしょに泳ぐどころか、一人だけ見学になってしまうよ。」
と、ふだん明るく、優しい母のいつになくきびしい声に、ぼくは、はっとしました。
「やばい。それは、いやだ。」
その日からぼくに、本気のスイッチが入りました。「絶対に遅れない。泳ぎきる。」そう自分にいい聞かせて、練習を積み重ねました。
本番当日、天気は快晴。「いよいよかあ、よし。」と深く深呼吸をして家を出ました。
桜島から、ゴール地点を探しましたが、遠すぎて見えません。「ゴールには、いったい何があるのだろう。」と思うと、わくわくしました。海は、だんだんと深くなり底が見えません。すうっと体が引き込まれるような底知れないこわさと不安を感じました。その時、
「だんじ、がんばれ。チェスト行けぇ。」
船に乗っている母と数えきれないほどのサポーターたちの声がふってきました。その声は、しずみそうになるぼくの心を守り、波をこえて、ゴールを目指す勇気をくれました。
ふり向くと桜島が小さくなっていました。波が次第に大きくなりました。高くうねる波、川のような速い流れ、泳いでも泳いでもいっこうに進みません。玉のようなしぶきが顔にかかります。そんな苦しい中、バディが、
「昨日の晩ご飯さあ、何食べたの。」
ぼくは、力がぬけ、笑い出してしまいました。そんなたわいのない会話や笑顔がいつしかつらく苦しい時間を忘れさせてくれました。
ゴールのはたが見えました。オレンジ色に輝いています。足はおもりがついているかのように重かったけれど、足が地面についた時の感しょくは、今まで味わったことのないものでした。ゴールに何があるのか、母の言った「人生が変わる」という意味が少しだけ分かった気がしました。
むねをはって、言えます。
「おれのやる気を見せてやる。」